2人が本棚に入れています
本棚に追加
さくらSCのコーチ桐生結人（きりゅうゆいと）は、この微妙に張り詰めた空気を切り裂いて大声で一華を非難する。
「フィギュアスケートはお金が掛かるんです。大学生にもなったし、将来のことも考えればおのずと答えはでますよね」
冷静に語る一華だが、桐生はあまり聞いていないようで、なんだか得意気な顔をしている。
「まぁいい。だから、一華をこのトライアウトに推薦したんだ。佑、やっぱり一華を選んだな」
「お前……先生の差し金か」
これまで淡々とした態度だった佑が、桐生を見るなり嫌そうに一歩引く。どうやら、佑と桐生は知り合いのようだ。
「昔は結人先生、結人先生って可愛かったのにな。まぁ、大人になったってことか。よし、一華、ちょっと佑とやってみろ。こいつ、一応上手いんだぞ」
桐生のウインク一つで、空気が華やかになり、その場にいた女性たちは目を輝かせる。
「いや、だから私は――」
「行きましょう」
最初のコメントを投稿しよう！