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「さすがですね」
「何が?」
トップギアを入れたため余裕がない一華の言葉は不機嫌そうにも聞こえる。けれど、佑はそれにまったく気付いていないのか平然と続ける。
「僕にちゃんと付いてきていることがです」
「……それって、私が付いて来れるか試してるってこと? 合わせる気はなかった、ペアでやるつもりなんてなかったんだね。からかって楽しかった?」
怒りに任せている訳ではないが、一華のスピードが上がる。
「いえ、このくらいは一華さんなら当然できると思っていたんで、試してはいなくて確認です」
「何、その嫌味な高評価。こっちはいっぱい、いっぱいなのに」
「だから手を強く握っているんですね」
佑の指摘に、一華は無意識に入れていた手の力を慌てて抜く。本当は手を離してしまいたかったが、それは佑が許してくれなかった。
「……絶対負けない」
一華が負けず嫌いを発揮した一方、リンク外ではトライアウトのために集まった少女たちが固まって不満を溢していた。
「ハンドトゥハンドのストロークだけじゃん。あれなら、私たちだってできるよね。スロージャンプとかやってみてよ」
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