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一華は佑の鼓動が聞こえているように感じていた。直前まで繋いでいた手から伝わってきていた熱が脈打つように相手の存在を教えてくれて、どう動けばいいのか迷うことはない。
「さっきのあれ、できますか?」
「あれって、トリプルルッツのこと」
「そうです。僕たちが滑っているのに、たいしたことないって顔をされるのは我慢できません。僕たちをちゃんと見ろって言いたいです」
いまいち何を考えているのかわかりにくい佑だが、実は相当な負けず嫌いらしい。そして、それは一華も同じだった。
「「ここで、跳ぶ」」
詳しい打ち合わせはできない。ストローク中、ジャンプの種類を短く伝えただけだった。それなのに、二人は同じタイミングで踏み切り着氷した。
「あいつら、サイドバイサイドのソロジャンプ決めやがった。練習もしてないのに同じタイミング、同じ種類で回転数もぴったりなジャンプ……」
鮮やかなジャンプを目の当たりにして、桐生は髪をかきむしって笑う。
「ジャンプくらい、私だって……」
「でも、トリプルルッツは難しいかも。結城さんって、アクセル以外はすべてのトリプル跳べるよね。成功率も悪くないはず」
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