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辺りが騒然とする中、佑と一華は大きく肩で息をしながらその場で止まる。
「はぁ、はぁ、やった、ぴったり跳べた。どうよ」
試されたことに腹を立て、負けないと意気込んでいた一華だが、そんなことはすっかり忘れたように嬉しそうに胸を張る。
「すごい……やっぱりすごいです。改めて、一華さん。どうか、僕とペアを組んでください。僕の手を取ってください」
腕で汗を拭っていた一華に、佑がおもむろに近付いてきたかと思うとすっと体が屈められる。まさか転んだのかと一華が慌てて視線を下げれば、氷上に跪いた佑から手を伸ばされ、熱っぽい瞳でみつめられる。その格好は、まるでプロポーズのようで周りが悲鳴を上げた。
「いや、いや、いや。それは無理でしょ。もっと若くて可能性のある子にしなよ。私はもう引退するんだから」
充実した表情を浮かべていた一華だが、まずは慌てふためき、それからすぐに自嘲を含んだ笑いに切り変わり、最後には憂いを帯びたものに戻ってしまう。
「そう簡単に断るなよ。こいつだって、こんなんだけど勇気を持ってお付き合いを申し出てるんだぜ」
桐生が佑の肩を掴んで、ニヤニヤしながら一華を説得してくる。
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