一 ハンドトゥハンド

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「……離してください」  肩に乗った手を軽く振り払いながら、佑が一華をじっとみつめる。ここにきて、懇願するような表情をされて一華も即答で断りにくい。 「ここはお試しってことでどうだ?」 「なんで、あなたが仕切るんですか」  桐生の提案に佑が眉を寄せる。どうやら佑は桐生のことを苦手しているようだ。 「桐生先生に言われたらしょうがないですね。わかりました、やってみます。でも、協会の方もいいんですか?」  一華は桐生に頼まれたら断れないと、これまでの主張をあっさりと覆して了承する。ただ、一華の一存だけで話が進む訳ではない。 「佑くんきっての希望ですし、息もぴったりなようですから試してみていいかと思います。何より、強化コーチになる予定の桐生さんの推薦者ですから」  先程までは、一華のことを誰かわからないと言っていたのに連盟は手のひらを返すのが早い。 「よし、決まったな。ふふん、よかったな、佑」  どや顔をした桐生に対し、佑は口元をひきつらせていたが、すぐに一華に向き直る。 「明日から、よろしくお願いします」 「えっ、明日から……いや、そうだよね。授業、何講目まであったかな」
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