一 ハンドトゥハンド

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「ふーん。背は俺と同じくらいだろうけど、まだまだ鍛え足りないんじゃねえの。ちゃんと、姉ちゃんを支えることできんのかよ」 「それって、どういうことかな。私が重いって言いたいのかな」  一希の発言に一華が目を細めれば、慌てて取り繕われる。 「違う、違う。そうじゃなくて、姉ちゃんを危険な目に合わせないように、もっとがっちり安定感が欲しいって意味で――」 「そうねぇ、確かに少しまだ線は細いかしら。佑くんは金の卵だから、怪我を避けるために鍛えるのは賛成ね。ペアをやる日本人の男の子は少ないから、オリンピックに出場できるカップル誕生は協会の悲願よね。一希くんもフィギュアをやってたら、一華とペアを組めたのに」  残念と肩を落とす母に対して、一希は大袈裟に顔をしかめてみせる。 「姉弟でやってもいいもんなんだ。見つめあったりとかして、笑っちゃいそうじゃん」 「佑くんの前のパートナーは、お姉さんの環(たまき)ちゃんだったわよ。綺麗なカップルだったわね。お姉さんは今、芸能人になったしね」
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