一 ハンドトゥハンド

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 ピロンピロン、ピロンピロン 「はぁ……」  大学に着いても、同じ音が一華を悩ませる。ちなみに、授業もあるためちゃんと音は切ってあるのだが、もう頭に音が残ってしまっている。 「さっきからスマホばっかり見てため息なんて。もしかして、ついに彼氏できた?」  学食で頭を抱える一華に、周りは興味津々といった風に近付いてくる。 「まさか。弟……よりも可愛くないけど、みたいなもんよ」  なんだかんだで仲の良い一希のことを考えながら、一華は不本意にも佑を弟と称する。 「それって、年下ってこと。いいじゃん、可愛くて」 「良くない。彼氏でも弟でもなくて、あー、うー、パートナー!」  一華の答えは正しいが、正しくない。パートナーなどという言い方は、誤解を招く表現だ。 「何、何、弟みたいって話から、パートナーって面白い話じゃん」  俄然身を乗り出してきた友人と、それを見てさらに友人たちが集まってきたのを見て一華は自らの失敗に気付く。 「もしかして、今年入学する予定の一年生? どんな人? 芸能人だと誰に似てる? 何て呼ばれてるの?」 「一華さん」  友人の質問攻めにどう答えるべきか悩んでいた一華より早く、答えが出される。
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