一 ハンドトゥハンド

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「一華さん、迎えに来ました。練習に行きましょう」  大学内では異彩を放つ高校の制服姿で、佑が一華を呼ぶ。そして、当然のように手を差し出してくる。リンク上では迷わず取るべき手だが、ここは衆人環視の大学構内でどうするべきなのか一華は戸惑ってしまう。 「どうしましたか? 何か、まだありますか――あっ、荷物ですね」  一華のスポーツバッグを軽々と持ち上げた佑は、これなら問題もないだろうと微笑んでくる。あまりに洗練された行動に一華は佑を見上げたまま立ち尽くす。 「えっ、男子高校生!」 「やるじゃん、一華。彼氏、格好良い」  だが冷やかしの声が大きくなり、一華はすぐに我に返る。 「ちょっと、違う。な、なんで来たの」 「今日は四講目までと聞きましたけど、違いましたか? あと、いつまでそうやって立っているんですか」  勝手に来たくせに、不機嫌そうな態度をとる佑に理不尽さを感じるも、おばさん相手に囃し立てられて嫌なんだろうなと一華は少々同情もする。 「わかった、わかった。早く、行こっか」 一華は自分が大人になってあげればいいと、お姉さんぶって佑を促す。それに佑は眉間の皺を深くする。
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