一 ハンドトゥハンド

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 身内とごく一部しか知らない話だと思っていたのに、佑にまで知られているということはかなり広まっていることが予想される。関係者みんなに笑われているのかと頭を抱える一華をよそに、佑はズンズンとリンクに向かって歩く。それに百面相をしながら付いていった一華は気が付けばリンクのロッカーにいて、練習着に着替えていた。 「今日はアイスホッケーチームがいるから、陸上トレーニングな。じゃあ、まずはリンクサイドをジョギングだ」  一華よりも早く着替え終わっていた佑に手を取られると、桐生が指示を出す。佑のせっかちな様子に、一華は練習に飢えていたのだなと考える。 「お姉さんがフィギュア辞めて、誰か別の人と組まなかったの?」  有酸素運動によるウォームアップのため、一華は佑に話し掛ける余裕がある。 「何人か試してみましたけど、駄目でした。スピードについて来られない、すべて僕任せ……とてもやっていけそうになかったです」  佑のスケーティングは滑らかでスピードがあるため、慣れるまでは置いていかれてもしょうがない部分はあるだろう。むしろ、そこは佑がパートナーをリードしてあげなくてはいけないはずだ。
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