一 ハンドトゥハンド

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「それくらいでカップル解消するなら、私たちもすぐに終わりだね」 「どうしてですか」  間髪入れず、佑が心底不思議そうに一華をみつめる。そのまっすぐな視線に、一華はやましいことはないのに俯いてモゴモゴと理由を並べる。 「えっと、期待してるような上手さは私にはないよ。ジャンプはタイミング合ったけど、リフトとかスロージャンプとか重いかもだし……筋力もまだないし」 「わかってるならいいんです」  一華は佑より年上で、スケート歴も長い。けれど、ペア競技においては彼が先輩だ。そのため、偉そうな態度をとられても何も言い返せず、佑の真意が理解できない。 「よし、そろそろあたたまったな」  桐生の呼びかけに、二人はジョギングのスピードを徐々に落とす。 「二人とも、オフアイストレーニングが重要なのは理解しているな。体幹トレーニング、陸上トレーニングと色々あるが、一華! バレエやってたよな」  突然はじまった桐生の講義に一華は戸惑いながら頷く。 「一応、レッスンしてましたけど」 「よし、よし。ビールマンスピン、できたよな」
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