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「大丈夫です。ほら、大丈夫でしょう」
佑の返事の仕方がおかしくて一華は首を捻りたくなるが、姿勢を保つために思い留まる。
けれど、一華の思いを察したのか佑が答えをくれる。
「僕になんでもやってもらおうと考えていないでしょう、だから大丈夫です。スピードにも、合わせてもらって当然ではなくて、ついてこようと努力してくれました。だから、僕も合わせる努力しました。みんなペアという競技を知っていて、知らないんです。僕はペアを理解しようとしている人と滑りたいです」
はじめて饒舌な佑を見た一華は、その勢いに圧倒されて、ただ小さく頷いて同意するしかできなかった。
「バランスおかしいと思ったら無理するなよ」
さっきまで笑っていた一華が考え込んでいる様子を見てか、桐生が心配そうに見上げてくる。
「不安ですか? でも、絶対に落としませんから“大丈夫”です」
「うん“大丈夫”。わかってる」
自然な動作で二人は手を取り合って床に降りる。まだ出会ったばかり、ペアを組んだばかりで信頼などというのは早いかもしれないが、佑の実直な想いは一華に伝わった。「大丈夫」簡単に口にできる言葉だが、今ここでは重みのある言葉だった。
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