一 ハンドトゥハンド

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「あとは、一華がもう少し筋肉をつければ、難しいリフトやツイストリフト、スロージャンプもできるようになるな」  ツイストリフトやデススパイラル、スロージャンプなどの難易度の高い技は、女性にも自分を支える腕の筋肉が必要だ。これで、これからの練習方針が決まった 「筋トレ、どんなメニューがいいですかね、先生」 「そうだな、なるべくダンベルなんかの負荷を掛けるものは使いたくないな。両手、片手での腕立て伏せに縄跳びをまずは中心にやるか」  お金を掛けられるなら、ジムのマシーンでという手もあるが、まだスポンサーもついていない二人にそんな贅沢ができるわけがない。  こうして、二人はリンクが使える時はソロのスピンを合わせてみたり、簡単なリフトを氷上で行ったりとするかたわら、リンクサイドで走ったり、縄跳び、筋トレに励んだ。 「あっ、一希だ!」  アイスホッケーチームが練習している横で、ジャンプ力を高めることを目的とした三重跳びをひたすら繰り返していた一華は、弟を見つけて軽く手を振る。そうすれば、一希もすぐに気付いてくれて手を振り返してくれる。 「誰ですか?」 「一希だよ。あっ、佑くんと同じ年だよ!」
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