一 ハンドトゥハンド

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「肩の三角筋は盛り上がってはいないけど、無駄な肉がなくて引き締まってるの。でね、腹筋はもちろんシックスパックに割れてるの。しかも、アブクラックスっていう縦の線が入ってるの。アブクラックスは遺伝で筋トレしたからって誰でも手にはいるものじゃなくて――」 「わかった、姉ちゃんストップ。もういいよ」  一希に遮られて一華は話を中断するが、まだ話足りないと不満を顔に出す。 「へぇ、一華ってマッチョが好みだったのか」  桐生がニヤニヤと笑いながら言うため、一華はピシャリと否定する。 「美しいよねって話です。マッチョとか、筋肉凄いっていうのは一希を見てるし」 「僕だって凄いです」 「俺だって美しい」  一華の言葉に被せるように高校生組二人が主張する。その勢いに一華は驚いて目を瞬かせるが、すぐに大口を開けて笑う。 「ふははっ、筋肉自慢。こうなったら、二人で対決でもしたら」  一華としては冗談で言ったつもりだったが、二人は黙ったまま見つめ合うように火花を散らす。 「懸垂はどうだ? 俺たちはよく、そこの鉄骨を使ってトレーニングするんだけどさ。……できるか」 「できる」
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