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三回転ジャンプを何種類跳べるか、成功率はどれくらいかと少女たちは牽制するように尋ね合うが、一華に対抗して跳ぶ者は誰もいない。
比べられるとわかっているから。そして、例え違う種類のジャンプを跳んでも、もう一度跳んでやると言わんばかりに一華がじっとみつめているのを感じているからだろう。
一華は自らの言葉通り、実力で周りを動揺させた。
「あなたがいいです」
「えっ?」
不意に腕を捕まれて、一華は大きな声を上げてしまう。少女たちの反応にばかり気をとられ、近付いてきていた者の存在に気付いていなかった。
「佑くん、いきなり走り出してどうした」
「この人がいいです」
ポカンとした一華は自分を差している指をみつめ、数度瞬きしてから怪訝そうに首を傾げる。
「えっ、私は選考外でもう結構ですって意味?」
「いいえ、あなたがいいです。この人にします」
“が”を強調されてもう一度言われ、聞き間違いではないと確認できる。
「ちょ、ちょっと待って、ちょっと待って。何、急に決めてるの。トライアウトはこれからだよ。この人って、誰?」
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