一 ハンドトゥハンド

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 後ろから追い掛けて来た連盟の役員が、一華の前に立ちはだかる。まるで自分が悪いかのような態度に、一華はむっとしつつも表情には出さずに自己紹介する。 「さくらSC所属の結城一華です。一ノ瀬君が急にこちらに来て話を進めているようですが、どうしたらいいでしょうか」 「佑でいいです。これからペアを組むんですから、僕も一華さんと呼びます」  強引な佑に、一華はよくすぐ自分の名前が出てきたなぁと感心するくらいの思考力しか持てない。 「おいおい、だから勝手に話を付けるな。こんなに大々的にトライアウトを実施しているのに、始まる前に決定は駄目だ。それにこの子は……」  おそらく連盟は目星を付けていた子がいたのだろう。一華を見て、あからさまに誰だこいつはという顔をしている。 「バッチテスト七級を十一歳で取って、全日本ジュニアで台乗りしたこともある天才少女ですよ。相手には申し分ないと思います」 「なんでそんなに知ってるかな……八年前の話だよ。それにね、本当の天才少女は女子のエースである安野咲良(あんのさら)ちゃん。彼女は十歳で七級を取って、それから勢いも衰えてないでしょ」
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