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アルパカ……
だと思う。
けれど、それは間違いのようにも思える。なぜならこちらに向かって歩いてくるアルパカは、二足歩行だったから。
モコモコの羊のような白い毛に、長い首、つぶらな瞳が僕を見つめながら近づいてくる。
どう見てもアルパカだと思うんだけれど、きっちり燕尾服を着こなして、身のこなしは紳士的で、まるで執事のようだった。
「ようこそ。東京メトロアンダーウェブへ。ここは物語を紡ぐ場所。地下鉄よりももっと下層、深層心理と想いのアーカイブ。あなたは何をお探しでしょうか?」
喋った!しかもイケボ!
「え、えっと、ここに、メイド服を着た女の子が来ませんでしたか?」
「はて、さて。メイド服の女の子?」
「そう。白いタイツを穿いている。あと、カチューシャも。長くて白い耳みたいなのが付いていて……」
「ほうほう」
「見なかった……ですかね?」
と、アルパカの紳士的な物言いに気圧されて普通に話しちゃったけど、それ以前につっこみ甲斐があり過ぎる。
顎に手をついて首をひねっているアルパカには、ちゃんと手袋もはめて指まであるようだし。アルパカ似の……人?なんだろうだろうか……
それともやっぱり、僕の頭の打ちどころがどこかおかしいのかもしれない。
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