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「なるほどなるほど。そのメイドをお探しで」
「え、ええ。はい……」
「ここには時々、あなたのように迷い込んでくる人がおりまして……はい。しかしあいにく今日は、あなたにしかお会いしてはおりません。この館も広いので、もしかしたらまだ、出会ってないだけかもしれませんが……」
「ここは、一体……」
「資料館でございます。ひとの想いを保管しております。あなたはこの館内に迷い込んでしまったようですね」
そう言って背を向けると歩き始めた。それにつられて僕も付いて行く。
アルパカは天井を指さして言う。
「あのいくつもの、光の糸が見えますか?細いケーブル一本一本が、人の想いと繋がっているのです」
ぼんやりと所々で消えては光る細い糸。天井から根っこのようにゆらゆらと垂れ下がるのを、僕は口を開けて見上げる。その糸がいくつかの束となり、また大きなケーブルへと連結したり分岐したりして、壮大なシャンデリアのような形を作る。
そんなケーブルの行き着く先はあの、一際明るく点滅している錆びついた球のオブジェへ集約されているみたいだ。
近づいてゆくにつれ、そのデカさが桁外れだってことに驚いてしまう。
「想いの糸は付かず離れず寄り添いながら、束となり、関わり、人それぞれの物語が紡がれます。あの釜の中でそれを製本して、ここで保管しているのでございます」
「なんなんですか?あれ?」
「私は地球釜と言っています。ここに来られた方で、ドグラマグラって呼ぶ方もいらっしゃいましたけれども」
「何ですかそれ」
「さあ。さて。はて……」
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