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アルパカの後を歩きながら、沢山のケーブルに繋がれている地球釜を見上げる。まるで生きている鼓動のように光がうねりながら、点滅を繰り返している。たまにぐるぐると……動いている?みたい。
「はて、さて……そういえば。何をお探しでいらっしゃいましたかね」
「そうそう。女の子です。メイドの……」
「メイドさんですか?」
「はい。ああ、いえ。メイドが本職ではないですよ、たぶん。ただのアルバイトで、本当は……今、……」
高校卒業以来、もう四年も会っていない。いまは、どうしてるんだろう。
「ああ、なるほどなるほど。お察しします。致します。把握把握……ではでは、さてさて、貴方様に関する棚より探されたほうが、よろしいかと存じます。こちらの棚でございます」
アルパカに促されて見上げた本棚は、僕の身長の三倍以上はある、とんでもなく馬鹿でかい本棚だった。文庫からハードカバー、薄い雑誌のようなものから、辞典のようなぶ厚いものまで色々と、雑然と収めてあって、整理整頓のできない子が仕舞ったように見える。
「ここには毎日何万冊という本が増えていくんです。この本棚のどこかに、貴方様の探しものが見つかると良いのですが……はて、さて」
そう言いながら一冊の本を取り出して、こんなものはどうでしょうと僕に渡す。
吸い付いてくるように、僕の手に馴染む、赤いシックな本革で装丁された……本なのか?
どこを見てもタイトルや著者名が書かれていない。
真ん中の金具に綺麗な鍵が付いているだけ。小さなハート型の南京錠。ピンクゴールドに輝くそれが綺麗で、思わず触るとパチリ。自然と解錠した。
胸の鼓動が速くなる。
なぜかこの本を開くのは緊張する。知らない世界を覗くような気がして、不安と期待が同居してる。
恐る恐る開く。
そこには日本語が綴られていた。どことなく見覚えのある、懐かしい文体で。
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