セイラーと母と

3/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
 その話を聞いた団長は、セイラーの家を訪問し、歌を聴かせてもらった。  なるほど、団員の言うことは大袈裟ではなかった。  団長は、セイラーの歌声がサーカステントに響きわたる光景を想像した。  団長はその日のうちにセイラーの母に相談を持ち掛けた。 「お母さま、ちと相談ですが、息子さんを私に預けてみませんかね?サーカスの歌い手として全国各地を廻らせてみたいのですが。もちろん息子さんの生活のケアもちゃんと行いますし、給金も払います。」  セイラーの母は驚いたが、この申し出を承諾することにした。  息子に歌の才能があるかもしれないとは思いながらも、歌手になれるわけもなく、かといって仕事も出来ない将来を憂いでいたからであった。  
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!