オペラ歌手 セイラー

セイラーと母と

　今よりもかなり昔の話。

　南イタリアの片田舎、とある村に、セイラーは生まれた。

　セイラーは先天的に目が悪く、ほとんど見えなかった。

　セイラーの父は、セイラーを育てることについて母と意見が別れ、そのまま家を出ていった。

　セイラーの母は、村のブドウ畑で働きながらセイラーをどうにか育てることにした。

　セイラーは視力以外はとても健やかに成長していったが、出掛けることが出来ないため、母がいない間は独りで家にいるしかなかった。

　そんなセイラーがひとりでも楽しめるようにと、小さい頃オペラ歌手になりたかったセイラーの母は、セイラーにオペラの歌を教えた。