第五章 魔王

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第五話 アスレチック  王国の(はずれ)に存在していた魔王が、大魔王様に許可を求めた話は、魔王連合に伝わった。  私は、カレン・ダンジョン494代目の魔王です。日本からの転生魔王です。姿かたちは、女子高校生くらいになっています。嬉しい誤算でした。この話は、長くなるので割愛します。私は、494代目のダンジョン・マスターで魔王です。  カレン・ダンジョンというのは、私の前世である日本に居た時に、使っていた名前だと思います。日本で生活をしていた記憶はあるのですが、名前とか家族とか友達は思い出せません。家族や友達が居たという認識はあります。恋人は・・・。居なかったようです。働いていた記憶もありますが、内容までは思い出せません。  私のダンジョンは、10階層まで増やすことに成功していました。  もちろん、大魔王様には敵わないのは解っているけど、自慢のダンジョンです。日本に居た時に遊んだ記憶があるゲームを参考にして作りました。大魔王様の眷属以外では、6階層の突破もできませんでした。  あっ眷属も強い子に恵まれました。自慢の子たちです。  日本では、ペットが飼えなかった反動で、モフモフが増えてしまいました。筆頭は、人の言葉を話すネコです。三毛猫です。可愛いです。今も、私の膝の上で丸くなっています。  大魔王様に、貰ったポイントで進化しました。他の魔王の所では、人に姿に変われる眷属が増えたようですが、私の所では、人の姿には変化しませんでした。その代わりに、スキルを覚えて強くなっています。大魔王様の眷属には敵いませんが、他の魔王の眷属と比べても頭一つ抜けているようです。交流会で、眷属同士の模擬戦が行われました。今、膝の上で丸くなっているネコ(プロス)が優勝してしまいました。  大魔王様からご褒美も貰いました。  さて、話す内容が飛び飛びになってしまうのは、日本に居た時から変わっていないと思いますが、問題は無いでしょう。私が解っていればいいのです。  魔王連合は、大魔王様に臣従した魔王たちの連合です。  第一次とか第二次とか、いろいろ格差はありますが、大魔王様を除いた魔王と大魔王様の眷属と初期メンバーが属しています。情報共有が元々の役割でしたが、魔王の数が増えてしまったために、大魔王様に伝える前に、魔王間で調整が必要になってしまう事柄が出てきて、話し合いの場に使われています。  そんな魔王連合から、王国の(はずれ)にダンジョンを持っていた魔王が、大魔王様から許可を貰った新しい形のダンジョンの話が伝わってきました。まだ、その魔王も作成を開始したばかりなのですが、私は可能性を感じて、私の領地でも作成したいと思いました。  私の感覚から言えば、遊園地とか公園の様なダンジョンです。  大魔王様も遊園地と表現しているので大丈夫でしょう。私は、既にギミックハウスを作成しました。面白そうだったので、すぐに申請を行って、作りました。私のギミックハウスは、眷属たちの運動を目的とした施設です。罠は最小限にして、眷属たちが追い立てるようなギミックハウスです。  評判は・・・。同格の魔王たちや、魔王の眷属たちからの評価は高いです。訓練に使わせて欲しいという申し出が多いです。訓練の様子を、公開していますが、そちらも評判がいいです。見ているのは、魔王や眷属ですが・・・。一般からの評価はよくありません。難易度調整が難しく、挑戦者に合わせようと思って、眷属たちが主役のギミックハウスを考えたのですが・・・。大魔王様の恩恵を受けて、眷属が強くなりすぎました。  私のダンジョンの近くには、他に魔王が居ません。  正確には、大魔王様の配下になった魔王は、居ないようです。拒絶した者や、性格が歪んでいる魔王は居たようですが、討伐されています。ダンジョンのコアも残っていないので、最終の魔王だった可能性が高いです。そうそう、大魔王様から通達がありました。ダンジョンは、最終の魔王でなくても、消滅が可能だと教えられました。順番を逆にすればいいだけのようです。コアを破壊する前に、魔王を隷属させる。隷属したダンジョンのコアを破壊すれば、次世代の魔王は産まれません。  さて、新しいダンジョンの申請は、通りました。  眷属は、書類仕事が出来ないので、他の魔王に頼ってしまいましたが、無事に申請が通ったのでよかったです。他の魔王にも、お礼状を出しました。 「プロス。ソフィー。ジェル。ルース。申請が通ったので、新しいタイプのギミックハウス?を作るよ」  私は、私の眷属である四天王(もふもふたち)に声を掛けます。  皆、私を護衛するように、近くに居てくれます。皆は、コントロールパネルが使えないので、私が作らなければなりません。そうそう、魔王がダンジョンを拡張する時に使う仕組みはコントロールパネルだと思っていたのですが、形状は魔王によって違うようです。宝玉のような魔王も居れば、石板の魔王も居るようです。多いのは、大魔王様と同じように”本”を使うようです。できる事に違いはないのですが、作り方は違います。同じ本でも、違うようなのです。  大魔王様は、本タイプの端末から、パソコンの様な端末を作り出して作っているようです。規格外です。  私の作る新しいダンジョン?ギミックハウス?は、アスレチックです。遊園地が許可されたので、アスレチックもOKだと思ったのです。身体を動かすようなアトラクションやアクティビティを用意します。  最初に作ったアスレチックは不評でした。  眷属に合わせて作ったので、難易度だけではなく、人では体躯に合わない形になっていました。反省です。  何度か、リニューアルを重ねて、人の姿になれる眷属では難易度は低いのですが、魔王の運動施設としては丁度よい難易度のアスレチック・ダンジョンが出来ました。最終的には、眷属にも運動ができるような難易度の施設も作りました。  人が少ない地域で、人は実入りが少ないアスレチックよりもギミックハウスに向かっています。  大魔王様からは、アスレチックを魔王用に解放するように言われました。  その報酬として、ポイントを大量に頂きました。貰ったポイントで、眷属たちから上げられていた要望を叶える事にしました。眷属たちは依り代にできる人形を欲していました。  おかしいのは、プロスです。通常の姿は猫です。大型にもなれるのですが、ペットの猫です。その猫が欲しがったのは、ドラゴンのぬいぐるみです。ぬいぐるみの中に入って、私が寝る時の抱き枕に立候補したのです。プロスが喜んでいるので、私も嬉しいのでいいのですが・・・。何か、理不尽に思えます。作ったドラゴンのぬいぐるみが無駄に高性能なのがまた意味が解らない状況を加速しています。  今日は、プロスは猫の姿で私の護衛をしています。  領域内なら、護衛は最小限でも大丈夫です。基本は、プロスが護衛なのです。 「魔王カレン!」  アスレチックを見ていると、魔王ギルバードに話しかけられました。  多分、彼も元日本人なのでしょう。話題が似ているので、話しやすいです。恋人には出来ません。彼は、自分の眷属であるコアを愛しているようなのです。それに、あまり好みではありません。少しだけ暑苦しいのです。  魔王ギルバードと一緒に来たのは、魔王カミドネです。  私のアスレチック・ダンジョンは、魔王同士の交流の場所になってしまいました。  私のアスレチックは、眷属が運動を行うのに丁度よいと評判を呼んでいます。人の姿に慣れない眷属も多く、そんな眷属たちは、ギミックハウスの中ではあまり活躍ができません。本業のダンジョンの中では、活躍の場が用意されているのですが、ギミックハウスへの挑戦者が増えた関係で、”死”の可能性が高いダンジョンに挑む者が減ってしまっています。  眷属が運動を行う。魔王たちに自分の活躍を見てもらう場所が、アスレチックなのです。  大魔王様からの依頼を受けて、アスレチックは拡張を続けています。  拡張が終わったら、今度はランキングの策定です。私の眷属が基準となって、ポイントが付与されます。タイムも計れるようになっています。  そして、魔王たちが交流するためのカフェテリアを作りました。  アスレチックが一望できる場所に作られたカフェテリアの従業員は、大魔王様の所で保護された獣人族です。戦闘に向かない性格の者たちが多く働いています。  魔王カミドネと魔王ギルバードから、他の魔王の話を聞きます。  それも、ホストとして活動する私の大事な仕事です。  雑談で得た知識ですが、魔王には寿命は存在しないようです。  コアが破壊されない限りは、殺されても復活の可能性があるようです。大魔王様が、従属を拒否した魔王を討伐して実験をしているようです。  魔王になってから、幸せを感じている。  眷属たちと過ごすのとは違った感覚を覚えている。魔王同士の腹の探り合いも、気に入らない魔王が居ても、それが楽しくもある。  大魔王様に臣従してよかったと心の底から思っている。  あとは、恋人が出来れば・・・。無理だろうな。皆、眷属を愛している。そして、私も自分の眷属たちが一番だと思っている。
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