鈴井玲奈との再会

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鈴井玲奈との再会

 保護者説明会の日になった。学校の中で鈴井玲奈選手とすれ違うのではないかと、内心ドキドキしながら過ごす。  僕の母親は日中の仕事に出てしまったから、当然この説明会には来られない。だから、どんな講演をしたかについて、僕は知る由も無かった。  僕等は下校の時間になり、その話題に触れる触れない関係無しに、この後訪れる、有名選手の姿を想像しながら帰宅した。  結局鈴井玲奈選手に会う事はできなかった。やっぱりテレビの中でしか見る事ができないのだ。でもだったら、僕はあの時何故あの場所で会う事ができたのか。  僕は思い立ったかのようにあの河原へ向かう。あのベンチに腰を降ろし、暫く時間を過ごす。  「だーれだ。」  僕を後ろから目隠しする声。それはすぐに誰かわかる。もちろん夏美だ。  「もう、いいかげんにしろよ。」  僕は手を払いのけながら振り返ると、そこには鈴井玲奈選手の姿。僕は驚いて声にならない。  「あはは。気が付いた。やるねー。君は学校一の美女を口説き落として、目下交際中って。学校中の噂になってるの知ってた?」  鈴井玲奈からそんな言葉が最初に降って来るとは思わなかった。  「ずっと覚えてたよ。忘れてない。君がこのベンチで小さく小さくなって。今にも空の中に飲み込まれて消えてしまいそうだった。そこに私が一個のボールを預けた。でも、君。まだ立ち直ってない。」  きょとんとした表情で鈴井玲奈が僕の目の前で腰を降ろして目線を僕に合わせる。  「このままだと、あのキレーィな彼女に振られて、君は中坊みたいなつまらない男に逆戻りだぁ。どうする?これは君にとって、人生最大のクライシス、ではないかな?」  僕は何も言えない。  「それで、これは招待状なんだけどね。私の所属するチームのスタジアムに遊びに来て欲しい。」  僕はそうやって、住所や連絡先が書かれた封筒を手渡される。  「必ず来てね。」  そう言い残すと、手を振って鈴井玲奈は去って行った。まるでこの道が普段のトレーニングコースであるかのように、そのまま走って去って行った。  暫く僕は、氷が今にも張りそうな川を見つめながら、白い息を吐く。  段々と日が陰って行く。  「だーれだ。」  あれ?  僕を目隠しした犯人は、夏美だった。  「あれ?」  夏美は怪訝に僕の顔をのぞき込む。  「なんか。既にそのイベントは終了してます。って顔してる。」  咄嗟に、鈴井玲奈とのやりとりを思い出した。  「いや・・。さっき鈴井玲奈に会った。」  「え?本当?!どうだった?優しい人だった?」  「うん。招待状くれた。今度、スタジアムに来て欲しいって。」  「えーいいなー。私も行きたい。」  「じゃぁ一緒に行こう。」  僕等は今度の日曜日に一緒に、鈴井玲奈の居る、スタジアムを訪れる事になった。
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