異世界転生

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異世界転生

 僕等は二人で鈴井玲奈がいるスタジアムを訪れる。巨大なドーム型の建物の中にその人はいた。  「こんにちは。」  鈴井玲奈が暖かく僕等を迎えてくれる。色々とあちこちと、スタジアムの中の様子を説明してくれた。鈴井玲奈は練習する光景を直に見せてくれた。他の選手達と様々にボールをけり合う光景が、とても新鮮だった。  僕はふともよおした。つまりトイレに行きたくなったので、トイレに駆け込んで用を足した。トイレにいる間になんらかの爆音轟音。そしてトイレの電気は消えてしまう。  スタジアムの練習場に戻ってみると電気が全部消えていて、真っ暗闇になっている。いや、外は未だ昼だから、若干明りが室内に注ぎ込んでいる。  血まみれになった選手達の姿。そのうごめく姿の中に、奇跡的に無事な姿である、鈴井玲奈の姿があった。  「は・・はやく・・。」  鈴井玲奈は僕に気が付くと、僕の後ろを指さした。  なんと夏美が宙に浮いている。単に浮いているわけではなかった。なにやら紫と黒の衣装をまとった、顔面が青白く目が完全に憤って深紅にそまった、異形な姿の人物に、空中で夏美はつるし上げられていた。  「ふははははは」  部屋中にその謎の人物の声がこだまする。  「名も無き生きるべきも無き。死する。それもあながちあるがままに。普通にしていれば、単に生きる事の値打ちすら知らずに居られたものを。人間とやらが発展させた科学とは、生きる事と死ぬ事のたもとを分かつことを長々と成し遂げただけではないか。」  いやいや待てよ。何を言っているんだ、この悪魔みたいな生き物は。  「既に知ってしまったのね・・。」  鈴井玲奈がゆっくりと立ち上がり、両手を重ね合わせると両方に肩幅までその手を広げる。その間にできた空間に、金色をした棒が登場する。鈴井玲奈はその棒を握りしめると、フラフラとしながら足をしっかりと踏みしめた。  「くくくく。こやつら人間どもにそれを教える事が叶わぬから、そなたのような者が必要とされる。悔しいか。お前はそのままその役目で生涯を潰えるのだ。」  「ふん。知れたこと。」  「相変わらず減らず口だな。」  「このムーンカエサルで何度も私に滅ぼされた癖に、懲りずに現れるのか!」  鈴井玲奈が激しく叫ぶ。それに呼応するかのように悪魔のような人物が言い返す光景が繰り返される。  「やってみるがいい。そのムーンカエサルとやらで。」  「また知らんぷりか。腹立つなー。」  「やってみろ、ムーンカエサルとやら!」  「腹立つなー。」  鈴井玲奈は直立不動に立ちすくむと、金色をした棒を正面から上に突き上げて、念仏を唱えるように片手を棒の軸にそえた。  「またその技か。俺を何度それで葬る気だ。」   「あなたを本質的に宇宙から取り除く方法は無いわ。でもあなたはこの技を食らえば、1ヵ月つまり30日間は、全くこの世界に割り込んでこられなくなる事も知っているわ。」  「ほー。そうか。俺にとっては30日と言う時間は一瞬だが。お前のようなつまらない人間どもにとっては、それはとても大切な時間のようだな。ははは。何度でも葬られてやるわ。」  そういいながら、その異形な人物は夏美のお腹の所に手をやる。夏美のお腹に強く指を突き刺すと、満足したかのように、夏美を高いところから突き落とした。高い所から転げ落ちるかのように地面に突き落とされる夏美の姿。  「はははははははははは」  悪魔のような人物が叫び声をあげる。  「この変態野郎がー!」  鈴井玲奈は叫んだ。  「ふふはははは。手も足も出ないだろう?」  「このムーンカエサルが、お前の息の根を止める!」 ***  そこで僕の夢は覚めた。なんの事は無い。夢に過ぎなかった。悪夢から復帰して時計を見るとAM5:20分だった。まだ朝には程遠い。もうひと眠りしよう。
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