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安易に人を信じちゃダメです
青年はお堅い仕事に就いていた。しかし、聖人君子のように過ごすうち、日々の鬱憤は溜まり、露出趣味に目覚めた。初めは自宅の中で薄着になるところからスタートしたその趣味は、徐々にエスカレートしていった。そしてとうとう、青年は深夜、人気のない場所で露出するまでに至った。
見せたいわけではない。見られるかもしれないという緊張感と、イケナイことをしているという罪悪感に興奮するのだ。そう、決して見られたいとは思っていなかった。
ど、どうしよう……
隠れている僕のすぐ近くで、道端にきちんと畳んで置いていた自分の服が乱されていく。
「え、やばwwこれ、この辺で露出してるってことじゃねwww」
「まじかwwwくそうけるww」
「お前探してこいよww」
「えぇwwやだよwwその服、男物じゃんwww」
「ワンチャン、美人かもしんねぇよww」
「まじかーww探すかーww」
酔っ払ってるのかな……どんだけ笑ってくれてもいいからそのまま服置いて、どこか行って!
青年の願いも虚しく、酔っ払った若者は青年を探し始める。あえなく見つかってしまう青年。若者達はスマホ片手に撮影しようとしてくる。それだけはやめてと懇願する青年。じゃあーーと提案されたのはーー
全裸で「腹踊り」や「どじょうすくい」や「ソー◯ン節」を踊ること。羞恥と自嘲といろいろな感情がぐちゃぐちゃに混ざって、涙目になりながら、青年は必死に踊る。青年のズボンを棒に見立てて、リンボーダンスを踊ったところで、ようやく、
「あーwwやべぇwww腹いてえwwくっそww」
「うけるwww」
「おにーさん、さいこーww」
「はぁ……wお礼に、撮影はなしでwww」
「そうだったなww残念ww」
「あー、くっそ笑ったわww」
「じゃあねーww」
「露出なんかしちゃだめだよーww」
そう言って若者達は去っていった。
安堵からその場にしゃがみ込んで、呆然とする青年。
ーーー助かった…。今日はもう、今すぐ帰ろう……
そうして気づく。
服が、ない……。え、なんで?どうし………もしかして持っていっちゃったの?ど、ど、どどうしよう……っ!
青年は再び呆然とし、すぐに慌て始める。自宅からここまでは歩いてきた。そんなに遠い距離ではないが、全裸で帰れるほど近くもない。途方に暮れていると、さっきの踊りでかいた汗が冷えて肌寒さを感じる。ブルり、身体を震わせているとーー
「お兄さん、大丈夫ですか?」
びくっ!
突然背後から声をかけられ、大きく体を震わせた青年は、恐る恐る振り返る。そこには、さっきの若者と似たような格好をした男がいた。すわ、さっきの仲間か!と身構えたが、男は困ったように、もしかして……と続ける。
「もしかして、俺と似たような格好の4人組にからまれました?」
「……ぇ?」
「あれ?違いますか?」
「ぁ、いや、違わないけど……違う…ような……」
全裸になったのは自分だが、服を奪っていったのはたぶんこの男の仲間だ。
「うーん、まぁ、困ってるようですし……俺そこに車置いてあるんで、送っていきましょうか?」
「ぇ、いいんですか?」
「うん。いいですよ。俺のダチのせいでもあるみたいですからね」
「ありがとうございます!」
そうして青年は男に連れられて車へ乗り込み、まんまといただかれてしまったのである。
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