第一章 友情

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      7  帰路につく。今日は、図書館は休館日である。  美紀は相変わらず、楽しそうに話しかけてくる。祐介は、上の空で、相槌を打っていた。  祐介は、先ほどの健一との会話を思い出していた。 「どう思う?」 「美紀か? たしかに、様子は変やけど・・・・・・」 「けど?」 「けど、お前の言う、不気味って言う感じじゃないなあ」 「じゃあ、どんな感じなんだよ?」 「なんか、俺には、心配そうな顔に見えるけど・・・・・・」 「・・・・・・心配そうな顔・・・・・・?」 「なんか、悩んでんのかな・・・・・・でも、なんか違うな、悩んでる顔じゃない」 「・・・・・・」 「多分あいつ、お前のことが、心配なんだよ」 《美紀は、俺のことを、心配してくれているんだろうか・・・・・・でも、なぜ?》  祐介は、美紀を見た。  美紀の表情が変わっていた。あの不気味な表情ではない。しかし、いつもの美紀の表情ではない。  なんというか、そう、健一の言うように、心配そうな表情だった。 「ねえ、祐介くん」  声の雰囲気が、なんとなく違う。 「・・・・・・なに?」 「昨日、変な男の人と会ってたやんな?」  祐介の脳裏に、あの『疫病神』の姿が浮かぶ。 「会ったけど・・・・・・それが?」 「何、話したん?」 「・・・・・・何も」 「何も?」 「なんか・・・・・・変な人だった。俺が、美紀の友達かって訊いてきて・・・・・・」 「・・・・・・」 「心当たりは?」  美紀が、首を横に振る。 「なんなんだろうな・・・・・・」  なんとなく、こころの中に、引っかかるものがあった。  やがて二人は、いつもの交差点で別れた。  今日は、あの男は現れなかった。二度と、現れてほしくなかった。  そして、あの不気味な美紀も、二度と現れてほしくなかった・  祐介は、玄関の鍵を開けた。 《あれ・・・・・・?》  何かが、心の中に引っかかった。《昨日、美紀とは、図書館の近くで別れたんだ・・・・・・》  鍵を、鍵穴から引き抜く。《じゃあなんて、俺があの男と会ったことを知っていたんだ・・・・・・?》  玄関のドアを開け、中に入る。《まさか……俺をつけてきていた?・・・・・・でも、なんで・・・・・・?》  いずれにせよ、昨日から何か異変が起きていることは、否定できない事実であった。
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