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7
帰路につく。今日は、図書館は休館日である。
美紀は相変わらず、楽しそうに話しかけてくる。祐介は、上の空で、相槌を打っていた。
祐介は、先ほどの健一との会話を思い出していた。
「どう思う?」
「美紀か? たしかに、様子は変やけど・・・・・・」
「けど?」
「けど、お前の言う、不気味って言う感じじゃないなあ」
「じゃあ、どんな感じなんだよ?」
「なんか、俺には、心配そうな顔に見えるけど・・・・・・」
「・・・・・・心配そうな顔・・・・・・?」
「なんか、悩んでんのかな・・・・・・でも、なんか違うな、悩んでる顔じゃない」
「・・・・・・」
「多分あいつ、お前のことが、心配なんだよ」
《美紀は、俺のことを、心配してくれているんだろうか・・・・・・でも、なぜ?》
祐介は、美紀を見た。
美紀の表情が変わっていた。あの不気味な表情ではない。しかし、いつもの美紀の表情ではない。
なんというか、そう、健一の言うように、心配そうな表情だった。
「ねえ、祐介くん」
声の雰囲気が、なんとなく違う。
「・・・・・・なに?」
「昨日、変な男の人と会ってたやんな?」
祐介の脳裏に、あの『疫病神』の姿が浮かぶ。
「会ったけど・・・・・・それが?」
「何、話したん?」
「・・・・・・何も」
「何も?」
「なんか・・・・・・変な人だった。俺が、美紀の友達かって訊いてきて・・・・・・」
「・・・・・・」
「心当たりは?」
美紀が、首を横に振る。
「なんなんだろうな・・・・・・」
なんとなく、こころの中に、引っかかるものがあった。
やがて二人は、いつもの交差点で別れた。
今日は、あの男は現れなかった。二度と、現れてほしくなかった。
そして、あの不気味な美紀も、二度と現れてほしくなかった・
祐介は、玄関の鍵を開けた。
《あれ・・・・・・?》
何かが、心の中に引っかかった。《昨日、美紀とは、図書館の近くで別れたんだ・・・・・・》
鍵を、鍵穴から引き抜く。《じゃあなんて、俺があの男と会ったことを知っていたんだ・・・・・・?》
玄関のドアを開け、中に入る。《まさか……俺をつけてきていた?・・・・・・でも、なんで・・・・・・?》
いずれにせよ、昨日から何か異変が起きていることは、否定できない事実であった。
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