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あいつを見かけた。
偶然、お姉ちゃんと一緒にいるときだった。
お姉ちゃんが呟いた。
「・・・・・・和也くん・・・・・・」
お姉ちゃんの視線の先には、あいつと並んで歩く、若い男の姿がある。
「和也くんって、誰?」
わたしが訊いても、お姉ちゃんは答えてくれなかった。
あいつと和也くんは、わたしたちの家のほうから、歩いてきた。
きっと、うちを訪ねてきたに違いない。
二人で出かけていたのは、幸運だった。
わたしは、お姉ちゃんと一緒に、物陰に隠れた。
あいつに見つかったら、絶対、ろくなことにならない。
あいつなんか、いなくなればいい!
消えてしまえばいいんだ!
ひどい、ひどすぎる。
彼にまで、手を出すなんて・・・・・・
二人は、どこかへ行ってしまった。
わたしとお姉ちゃんは、並んで歩きだした。
二人の家を目指し、歩き出す。
もう、日が暮れかけていた。
突然、姉が言った。
「先、帰ってて。寄るところがあるから」
わたしは、お姉ちゃんに、違和感を覚えた。
無表情だった。
奇妙で、不気味で・・・・・・
いつもと、目の色が違う。
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