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七限目の終わりを告げるチャイムが鳴った。他のチャイムとは、なんとなく違って聞こえる。まるで、ラジオから突然好きな曲が流れてきたような、そんな気分である。
「ほな、日直、号令かけて」
野口が言った。
「起立、礼」
日直が、やる気のなさそうな声で言う。
「ほな、そのまま」
野田は、数学の教科書を教車の中に片付けた。「ホームルームやるしな」
生徒たちが着席する。机の中から教科書を取り出し、鞄の中に入れていく。
「このプリントは、ちゃんと親に見せるように。個人面談の日程表やからな」
野口がプリントを配りながら、大きな声で言った。
「先生、これ、親だけ? 」
誰かが訊く。野口は頷き、
「そうや。けど、中間考査が悪かった奴は、三者や」
「先生、俺、三者?」
訊いたのは健一である。野口は笑って、大きく領いた。
「お前、赤点、何個あったと思てんねん? 」
健一の表情がゆがみ、大きなため息をつく。そんな彼を見て、祐介と美紀は、顔を見合わせて笑っていた。
「健一らしいな」
祐介の言葉に、美紀が小さく舗く。
野口は、再び教壇の前に立ち、
「ほな、終わろか」
と言った。その言葉と同時に、生徒たちの緊張が解ける。
「起立、礼」
日直は、先程より大きな声で言った.
「掃除、忘れんな」
この野口の言葉が、解散の合図である。席を整え、生徒たちが教室を出て行く。
「よし、帰ろ!」
祐介は、健一に声をかけた。しかし健一は、すまなさそうな表情をした。
「悪い、野口に呼ばれてんねんか」
「え、なんで?」
美紀は、一応訊いた。祐介も美紀も、なんとなく想像はついている。
「こないだのテスト、赤点やってんか。ちょっと、話しよかって」
予想通りだった。
「へえ、がんばって」
美紀は言った。「じゃ、悪いけど、先帰るわ」
「うん、そうして」
「じゃ、健一。また、明日な!」
祐介が言う。
「バイバイ!」
ため息をつく健一に向って、大きく手を振り、二人は教室を出た。階段を下り、昇降口に向かう。
「なあ、図書館、寄らへん?」
美紀が言った。祐介は、ロッカーにスリッパを戻しながら訊く。
「え? 図書館って、どこ?」
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