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「あ、知らん?」
美紀は言い、駐車場に向かって歩き出した。祐介もロッカーを閉め、美紀の後を追って歩き出した。
「図書館か・・・・・・」
「祐介くん、本好き?」
「ん~、あんまり」
「なんや。でも、好きになれるかもしれんで。読んでたら、めっちゃおもしろいし」
美紀は、苦笑しながら言う。「おもんないやつも、結構あるけど」
いい機会かもしれないと、祐介は思った。いずれ、本は読まなくてはならない。夏休みの宿題には、読書感想文も出るだろうし、課題図書として、何冊も読まなければいけないかもしれない。その練習だと思えばいいのだ。
「じゃあ、行こうかな」
「よし、決まり」
美紀は、自転車の鍵をはずした。
「あれ、俺の自転車、どこだっけ?」
祐介が呟く。美紀は笑って、
「ほら、あそこの奥」
と指をさす。たしかにそこには、祐介の自転車があった。美紀は目がいいのである。裸眼の視力が一・五らしい。祐介は、眼鏡かコンタクトがないと、遠くのものが見えにくくなってきている。祐介の裸眼の視力は○ ・二ほど。美紀の目が、うらやましい限りであった。
二人は、自転車を押して、学校を出た。朝は、別々の道を自転車に乗って登校するのだが、帰りは自転車を押して、話しながら帰る。いつもなら、二人に健一が加わっているのだが、今日はいない。
「今日は健一がいないから、静かだな」
祐介は、笑って言った。美紀も、笑顔で頷く。
「あ、そこ左」
小さな交差点に差し掛かり、美紀が言った。祐介が、先に曲がる。
「図書館って、遠い? 」
「いや、そんなに。五分ぐらいかな」
美紀の言った通り、角を曲がって五分ほどで、図書館に着いた。玄関の駐輪スペースに自転車を停め、鍵を閉める。
「ここか。結構、きれいな建物だな」
「うん、まあ、そうかな。うちの学校の図書室よりは、きれいやな」
美紀は言い、先に歩き出した。祐介も、鞄を持って後を追う。
自動ドアが聞き、空調設備の整った、図書館独特の快適な空気が、流れ出す。
美紀は鞄の中から、三冊の本を取り出した。
「昨日、返さなあかんかってんか」
美紀が笑う。「忘れてた」
「鞄、持っていようか?」
「ありがとう」
美紀は鞄を祐介に渡すと、三冊の本を抱え、カウンターヘと向かった。本を置いて戻ってくる。
「あ、今日も来たはるなあ」
美紀が言った。
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