第一章 友情

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         4  お姉ちゃんは、いつも、黙っていた。  ほとんど、何も言わなかった。  食事は、いつも静かだった。  お姉ちゃんは、「おいしい」とも、「不味い」とも言わずに、わたしが作った夕食を、黙々と食べる。 「おいしい?」  わたしが問うと、お姉ちゃんは、小さく頷く。  頷くだけで、まったく、何も話さない。  なぜ、話さないのか、わたしには分かっている。  話さない理由も、分かっている。  怖いのだ。  家の中で話すのが、怖いのだ。  また、あの男に怒鳴られると思い込んでいるのだ。  もう、いないよ、あの人は・・・・・・  何度、そう言っても、お姉ちゃんは理解しなかった。  わたしは、もう寝ることにする。  お姉ちゃんとは話すこともないし、第一、話したがらない。  わたしは、布団の中に潜り込む。  明日もまた、友達に会える。  そして、誰より、彼に会える。
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