最後のお願い

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病状が悪化したのは彼女が22になった時。 元々20歳まで‍持つかどうかも怪しいと言われていたから、と半ば諦めたような顔で彼女は言う。 毎日のように見舞いに来る俺を心配して、 「お仕事もあるんだから毎日来なくても大丈夫なのに」 彼女はそう言う。しかし伊達に何年も付き合ってきたわけではない。唇を触りながら何か言う時は嬉しい時。今も触っているから、俺が来るのは嬉しいのだろう。 「平気だよ。夏期講習とかの時期じゃない限り仕事の時間決まってるし、無理してるわけじゃないから」 俺は大学院を出たその年の春から、塾の講師として働いていた。彼女の家庭教師として教えていたのが功を奏したのか、わかりやすいと人気が出ている。夏期講習などの短期の集中的な講座がある時は、朝から晩まで塾にいることになるが、普段の授業は受け持つ数が決まっているので苦ではなかった。 それよりも、彼女と過ごす時間の方が大事だった。 最近の彼女は目に見えて痩せ衰えている。俺が見ていない時に遠いところに行ってしまいそうで、酷く怖かった。
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