最後のお願い

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病床に伏せつつも暇を持て余しているらしく、編み物を始めたのもこの年の冬のことだった。 最初は編み目もガタガタで、編み上がったものは目も当てられない出来だった。 「風花でも苦手なものはあるんだな」 と笑うと、プライドが傷つけられたのか、俺が病院に行っても編み物をしていることはなかった。 そのうちに冬季講習が始まり、なかなかお見舞いにも行けなくなった。忙しさのピークを超え、次に会いに行った時には、完璧な出来のセーターがベッドの上に置いてあった。 「ほら!苦手なんかじゃないでしょ!」 と、得意げに言う彼女のベッドの横には、紙袋に入ったぐちゃぐちゃの失敗作たちが詰め込まれている。俺はそれを見なかったフリをして、すごいすごいと褒め称えた。苦しんでいるところや必死なところは、決して俺には見せない。 それは病気でも同じだった。
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