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『私が良いって言うまで、病院に来ないで』
そんなメッセージが来たのが、彼女が23になる春のこと。
どうして、なんて聞くまでもない。やつれて苦しんでいるところは見て欲しくない。そう言うのは分かっていたから、俺も何も聞かずに『わかった』とだけ返した。
彼女の母は俺たちの関係に気付いていた。
本を読むのが好きな彼女のために、仕事が休みの日には図書館へ向かい、何冊か好きそうなものを借りては彼女の母に渡した。
読めるかどうかはわからないけど、と言いながら母は受け取る。
「そんなに悪いんですか?」
そう聞くと、声を出さずにこくりと頷かれた。
「滋くんには辛いところを見せたくないのはわかるけれど…正直、いつまでもつか…」
声を震わせ、俯き涙を流す風花の母は、背中やうなじが風花によく似ていた。
すみません、辛いことを言わせてしまって、と頭を下げる。
「私からも風花に言っておくから、今度はあの子がダメって言っても会ってあげて」
涙を拭いた彼女の母はそう言って微笑んだ。
芯の強さは母親譲りのようで、尚更風花に会いたいという思いは強くなった。
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