37人が本棚に入れています
本棚に追加
/127ページ
「うん。朝ごはん作ってたら自分のお弁当作る時間なんてなくてさ、今日もコンビニ」
彩はさしていやそうな顔もせずに、おにぎりをほお張る。
夏から秋にかけての季節の変わり目で、今風邪が流行っているのだ。
2日ほど前から彩のお母さんも風邪をひいたようで、その日から彩のお弁当はコンビニのおにぎりに変わっていた。
「仕方ない! あたし特性のから揚げを別けてあげよう!」
あたしは自分のお弁当箱の中にもう一個残っていたから揚げを彩に差し出した。
「え、いいよ別に。それ、楽しみにしてたんだろ?」
後から来た割にちゃんと話を聞いていたようだ。
一瞬返事に困ったが、そこは笑顔で乗り切る。
「大丈夫大丈夫! ほら、遠慮せずに!」
少し行儀が悪いけれど端で掴んだから揚げをそのまま彩の口に入れた。
「おいしい」
「でしょ? あたし特性の和風タレをからめてあるからね」
両親が定食屋を営んでいるので、料理の腕にはちょっとした自信がある。
仕事が忙しい両親のために、お弁当も自分で作って持ってきているのだ。
「2人とも、写真撮ろうよ!」
最初のコメントを投稿しよう!