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突然出現した女子生徒に心臓が早鐘を打ち始める。
「雪……?」
あたしは震える声で立ち尽くしている女子生徒に声をかけた。
その生徒は制服も髪の毛もボロボロになっていたが、間違いなく雪だったのだ。
あのとき殺人鬼たちに襲われることなく、ちゃんと逃げ切れていたようだ。
そう思うと心の底から嬉しかった。
雪が生きていたということは、香だって生きているかもしれない。
でも……。
あたしは泣き出してしまいそうになりながら、目の前の雪を見つめた。
雪の目は灰色に濁っていたのだ。
純也があたしの前に立ち、モップを両手で握りなおした。
「純也……」
「仕方がないことなんだ。俺が攻撃するから、すぐに取り押さえてくれ」
あたしはうなづくことしかできなかった。
雪を助けられるのはあたしたちだけだから。
やがて雪がこちらに気がついて走りだした。
あっという間に距離が縮まる。
「雪、ごめんな!」
純也は叫ぶと同時にモップを雪の腹部へと叩き込んだ。
雪の体がくの字に折れて、そのまま仰向けで倒れこむ。
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