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すかさずかけより、あたしは雪の体の上に馬乗りになり、両手を押さえ込んだ。
雪があたしの下で暴れ周り、うめき声を上げる。
それは人間のものとは思えない奇声だった。
激しく頭を振り乱し、あたしに噛み付こうとしているのか口を大きく開閉する。
その力が強すぎて歯が欠け落ちるのが見えた。
このままじゃ雪が……!
これ以上雪を傷つけたくなくて「早く!」と、叫ぶ。
純也は刃物を取り出して雪の横で膝を突いた。
しかし、雪が激しく頭を振るからなかなか狙いが定まらない。
あたしはグッと両腕に力をこめて雪の手を押さえ込む。
雪が苦しげな声を漏らた瞬間、純也が刃物を雪の耳に押し当てた。
そして思いっきりそぎ落とす。
雪がギャアア! と悲鳴を上げ、次にはすでに力を失って気絶していた。
あたしはゆっくりと雪の体の上からどいて様子を伺った。
ハンカチを取り出し、雪の耳に押し当てる。
薄いハンカチはすぐに血まみれになってしまった。
それでも両手で止血していると雪がうっすらと目を開けたのだ。
注目してみているとその目はいつもの色に戻っている。
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