57人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
雪は薬を水なしで飲み込んだ。
こんな状況だから、贅沢は言っていられない。
しかし、止血している雪の顔色はどんどん悪くなっていく。
もともと色白な雪だけど、今は真っ青だと言っても過言ではなかった。
「大丈夫? ちょっと横になる?」
声をかけるが、雪は左右に首を振った。
「思い出したの。自分がやったこと」
小さな声でそういわれ、あたしは言葉を失った。
やっぱり雪も誰かを殺してしまったんだろうか。
自分の意思とは関係なく、操られて無理やりに。
「それは雪のせいじゃない」
強い声で言ったのは純也だった。
純也がジッと雪を見つめている。
「でも、あたし、確かにこの手で……!」
「そうだとしても、それは雪のせいじゃない」
そんな言葉気休めにしかならないかもしれない。
実際に殺人を犯してしまった人間のつらさなんて、きっとあたしたちには理解できないから。
でも、雪は大きく息を吐き出して、少しだけ頬を緩めた。
「そうだね……。香は?」
ふと思い出したように雪が言う。
あたしは左右に首を振った。
最初のコメントを投稿しよう!