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スマホを手にとってもう1度声をかけたとき、通話はすでに切れてしまっていた。
「今のはなんなんだ?」
純也が不安そうな顔を浮かべて聞いてくる。
「わからない。でも、香の電話に誰かが出たことは確かだよ」
香は今1人じゃないということだ。
相手が仲間ならいいけれど、万が一殺人鬼だったら……。
あたしはいたたまれない気分になり、モップを握り締めてドアへ向かって歩き出した。
「やめとけ」
ドアの前に立ちはだかったのは純也だった。
「でも、香はあたしの友達だよ?」
「小村のことだって見捨てたんだ」
純也に言われてあたしは青ざめたままの雪へ視線をやった。
あの時のことはもちろん覚えている。
あたしたちは3人で雪を止めたんだ。
だから今からあたしがやることは本当に身勝手だと思う。
怒られても仕方のないことだ。
でも、あたしは香を探し出したい。
「純也は雪のことを見ていて。ひどい貧血みたいだから」
雪は椅子に座った状態でいるのもつらそうにしている。
床を綺麗にして、寝かせてあげたほうがよさそうだ。
「じゃあね」
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