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不意に香にそんなことを言われてあたしは瞬きをした。
「だってほら、ちゃんと王子様が助けてくれるでしょう?」
ニヤつきながらヒジであたしの腕をつつく香。
その瞬間昨日のデートのことを思い出して、頬が熱くなるのを感じた。
「あ、図星だ! 顔真っ赤だよ!」
雪がきゃあきゃあと楽しげに笑う。
「ちょっとやめてよ」
あたしは両手で頬を包み込んで眉間にシワを寄せた。
「でも本当にいいよね、彼氏」
ふと、雪が真剣な表情になって言った。
雪のように綺麗な頬はほんのりとピンク色に染まっている。
その様子にあたしは目を見開いた。
雪の視線を追いかけてみると、その先にいたのは小村紀夫(コムラ ノリオ)くんだ。
たしか自分から立候補して図書委員会に入っていて、本が大好きだと言っていたっけ。
薄い銀縁めがねの奥の目は意外と大きくて、そして優しそうに見える。
もしかして、小村くんのこと……?
「もし自分が殺人鬼になったらどうする?」
あたしの考えを遮断するように香が言った。
視線を戻すと、香はおもしろいものを見つけたような表情をしている。
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