悲鳴

3/32

57人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
不意に香にそんなことを言われてあたしは瞬きをした。 「だってほら、ちゃんと王子様が助けてくれるでしょう?」 ニヤつきながらヒジであたしの腕をつつく香。 その瞬間昨日のデートのことを思い出して、頬が熱くなるのを感じた。 「あ、図星だ! 顔真っ赤だよ!」 雪がきゃあきゃあと楽しげに笑う。 「ちょっとやめてよ」 あたしは両手で頬を包み込んで眉間にシワを寄せた。 「でも本当にいいよね、彼氏」 ふと、雪が真剣な表情になって言った。 雪のように綺麗な頬はほんのりとピンク色に染まっている。 その様子にあたしは目を見開いた。 雪の視線を追いかけてみると、その先にいたのは小村紀夫(コムラ ノリオ)くんだ。 たしか自分から立候補して図書委員会に入っていて、本が大好きだと言っていたっけ。 薄い銀縁めがねの奥の目は意外と大きくて、そして優しそうに見える。 もしかして、小村くんのこと……? 「もし自分が殺人鬼になったらどうする?」 あたしの考えを遮断するように香が言った。 視線を戻すと、香はおもしろいものを見つけたような表情をしている。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加