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あたしは左右に首を振ってその考えをかき消した。
香がそんなことするはずない。
関係のない生徒まで殺すなんてことありえない!
しかし、あたしは電話で聞いた女子生徒の悲鳴を覚えていた。
あれはもしかして、殺人鬼になっていない生徒の悲鳴だったんじゃないだろうか?
殺人鬼を攻撃したとき、誰もあんな悲鳴は上げなかった。
もっと獣じみた雄たけびだった。
あたしはスッと血の気が引いていくのを感じた。
「香、しっかりしてよ!」
近づいていくと、香と視線がぶつかった。
目の色は正常だ。
感染はしてない。
しかし、目はうつろであたしを見ていても、なにも見ていないように感じられた。
「殺せばいいんじゃん」
ふいに香がそう呟いた。
あたしは足を止める。
「え?」
「殺せばいいんじゃん!」
香は再び叫び、そして笑った。
目の前にいる香は本当にあたしの知っている香だろうか?
いつも雪のことを気にかけて手助けをしている香本人だろうか?
うろたえてしまいそうになるが、必死に香を見返した。
「ダメだよ、そんなことしちゃあ」
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