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あたしは諦めないって決めたんだ。
純也と一緒に……ううん、みんなと一緒にこの町を出るんだから!
「雪が見つかったの!」
あたしは香へ向けて叫んでいた。
雪の名前を聞いた瞬間、振り上げられていた手の動きが止まった。
「雪、今2階にいる」
「雪……」
一瞬、香の瞳がゆらゆらと揺れた。
それはあたしの知っている香のもので間違いなかった。
「そうだよ。雪は殺人鬼に感染してた。だけど大丈夫、あたしと純也がアザを切り取って元に戻ったから」
あたしは真っ直ぐに香を見て言った。
香はゆるゆるとあげていた手をおろす。
「雪はどこ? どこにいるの!?」
香は空中へ向けて包丁を振り回した。
まだ錯乱状態は続いているみたいだけれど、とにかくこちらを攻撃してこないようなのでそれでよかった。
「待って、今2人を呼ぶから」
あたしはそう言うと、純也のスマホに電話をしたのだった。
☆☆☆
純也に電話をしてから10分ほどたったとき、純也が雪を支えながら教室に入ってきた。
その姿を見るなり香は2人に駆け寄った。
「雪!」
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