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それなのに、純也に支えられて歩いていた雪がその場に崩れ落ちたのだ。
「雪!?」
香がすぐに駆け寄っていく。
あたしもその後を追いかけた。
明かりで照らされた雪の顔は今までにないほど青ざめている。
「出血は?」
「まだ止まってないんだ」
純也の答えにあたしは自分の上着を脱いで雪の耳に押し当てた。
「ありがとう遥。でも、もう大丈夫だから」
弱弱しい声。
それはすでにすべてを諦めているように感じられ、焦燥感が走る。
「なにが大丈夫なのよ! 全然大丈夫じゃないから!」
必死に耳を押さえて叫ぶあたし。
どうしてこんなに血が止まらないんだろう。
これだけ抑えているんだから、早く止まってくれればいいのに!
願うような気持ちで雪を見る。
「ダメなんだよ遥」
「え?」
「あたし、血液の流れを良くする薬を飲んでいるの」
え……?
そんなの初耳だった。
全身から血の気が引いていくのがわかった。
「だから、もういいから」
雪は微かに微笑んでいる。
「でも、そんな、まさか」
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