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自分でも何を言っているのかわからなかった。
血液の流れをよくする薬を飲んでいたら、出血は止まりにくくなる。
そのくらいの知識、あたしだって持っていた。
「あんたが雪の耳を切ったの!?」
金切り声を上げたのは香だった。
香があたしの体を突き飛ばし、雪の体を抱きしめた。
あたしは体のバランスを崩して、そのまま知らない生徒の死体の上に倒れこんだ。
それでもすぐに起き上がることはできなかった。
目の前の絶望が信じられなくて言葉もなかった。
「遥、大丈夫か?」
純也が手を差し出してくれて、あたしはようやく体を起こすことができた。
香は雪の体を抱きしめて声をかけ続けている。
あたしはただ、雪を助けたかった。
感染してしまった雪を元に戻す方法だって知っていた。
だからアザを切り取ったのに……。
もし、雪の服薬している薬のことを知っていたらどうしていただろう?
もっと他の方法をとっていた?
それとも、あのまま雪を見放していた?
考えてみても答えは見つからなかった。
ただ、過ぎてしまった出来事に追いすがることしかできない。
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