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やがて、雪が静かに目を閉じた。
それはとても綺麗な寝顔で、そしてとても冷たく感じられるものだった。
「雪……? 雪、目を開けて!」
香が雪の体を強く揺さぶる。
しかし、雪は目をあけない。
「嘘でしょ雪? ねぇ、どうして目を開けてくれないの?」
香が何度も雪の白い頬をなでる。
その頬に大粒の涙がこぼれ落ちた。
「香……」
純也が声をかけたその瞬間だった。
香がカッと目を見開いて振り向いたのだ。
大きく見開かれた目は充血し、涙がたまっている。
「お前らが雪を殺したんだ!!」
香の叫びに全身が震えた。
「あ……」
なにか言いたいのに言えなくて、言葉は喉の奥につっかえる。
「どうして雪にこんなことしたの!」
香は唾を飛ばしながら怒鳴る。
だって、こうするしかなかった。
こうすれば、雪が治ると知っていたから……!
「人殺し!」
香があたしを睨みつけて叫んだ。
その瞬間雷に打たれたような衝撃を感じた。
人殺し……。
あたしはその場に崩れ落ちてしまいそうになるのを、どうにか耐えた。
そうかもしれない。
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