悲鳴

16/17

57人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
同じように見上げてみると、星が出ていた。 こんな悲惨な状況下でも星を見上げる時間があるなんて、なんだかおかしくてつい笑ってしまった。 「香、大丈夫かな」 あれから10分ほど経過している。 そろそろ行かないと隣町までの移動は徒歩になりそうだから、時間がかかってしまう。 2人で香を呼びに戻ったとき、雪の隣でうずくまるようにして倒れているのが見えた。 「香!?」 驚いて駆け寄り、絶句する。 香の手首からは血が流れ出し、その顔は青白くなっていたのだ。 自分で手首を切ったんだ! 香が持っていた包丁が近くに転がっていた。 「香、しっかりしろ!」 純也が制服の袖を契って手首に巻きつけていく。 しかし、香は反応を見せない。 傷口は想像よりも深く、骨まで見えている。 あたしはスッと血の気が引いていくのがわかった。 香はしっかりと雪の手を握り締めているが、その手はすでに冷たくなりはじめていたのだ。 「香しっかりして! 死なないで!」 頬を叩いて目を開けさせようとしてもできなかった。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加