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同じように見上げてみると、星が出ていた。
こんな悲惨な状況下でも星を見上げる時間があるなんて、なんだかおかしくてつい笑ってしまった。
「香、大丈夫かな」
あれから10分ほど経過している。
そろそろ行かないと隣町までの移動は徒歩になりそうだから、時間がかかってしまう。
2人で香を呼びに戻ったとき、雪の隣でうずくまるようにして倒れているのが見えた。
「香!?」
驚いて駆け寄り、絶句する。
香の手首からは血が流れ出し、その顔は青白くなっていたのだ。
自分で手首を切ったんだ!
香が持っていた包丁が近くに転がっていた。
「香、しっかりしろ!」
純也が制服の袖を契って手首に巻きつけていく。
しかし、香は反応を見せない。
傷口は想像よりも深く、骨まで見えている。
あたしはスッと血の気が引いていくのがわかった。
香はしっかりと雪の手を握り締めているが、その手はすでに冷たくなりはじめていたのだ。
「香しっかりして! 死なないで!」
頬を叩いて目を開けさせようとしてもできなかった。
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