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だけどそれを気にする余裕も体力もすでになかった。
なにもかもが限界なのだ。
この殺人鬼の感染が起こり始めてからまだ1日も経過していないというのに。
「ねぇ、純也。もしあたしが感染したら、置いて行っていいからね?」
「なに行ってんだよ。置いていくわけないだろ」
「だけど、純也のこと攻撃しちゃうよ」
「そうなる前に、ちゃんと対処してやるから」
「そっかー」
話ながら、なんだか目の前が灰色の染まっていく気がした。
自分の意識がありながら、それが体の奥へと移動していくような、奇妙な感覚。
「遥?」
純也が名前を呼んでいる。
答えなくちゃ。
理解しているのに、あたしの体は反応しなかった。
目の前は完全に灰色のフィルターがかかった状態だ。
なにこれ、どなってるの?
あたしが純也の方へ視線を向ける。
でもこれは自分の意思じゃなかった。
まるでなにかに操られているような……。
「遥!?」
純也が勢いよくベンチから立ち上がる。
どうしたの純也。
なにをそんなに慌てているの?
あたしは自分の両手が勝手に動くのを見た。
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