感染

3/8

57人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
あたしの両手は純也の首に絡みつく。 え……? まるで、他人の映像を見ている感覚だった。 あたしは純也の首を絞め始めたのだ。 純也は真っ青になってあたしを見つめている。 なんで? これ、どうなってるの? やめようと思ってもやめられない。 自分の感情が行動として表に出ていかない。 純也は顔をしかめ、苦しみ始める。 やめて。 やめてよ! どうして純也を傷つけようとするの!? 必死で両腕を制御しようとするが、はやり自分の意思ではどうにもできなかった。 あたしの腕はあたしのものじゃなくなっている。 純也が目を見開き、眉間にシワを寄せて泣きそうな顔になる。 その右手には包丁が握られていた。 嘘でしょ……。 あたしは息を飲む。 やめて純也。 あたしを殺さないで! 心の奥底で願うだけで、言葉にもならない。 純也の顔は酸欠でだんだん青くなっていく。 それを見て焦りが生じた。 純也がやろうとしていることは合っているんだ。 あたしは純也を殺そうとしている。 だから純也はあたしを殺す。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加