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純也がなにかの布をあたしの耳に押し当ててくる。
「うぅ……」
右耳に走る激痛に耐えながらあたしは顔を上げた。
純也は包丁であたしのアザを切り取ってくれたのだ。
「ごめん。ごめんな遥」
純也は謝りながら泣いている。
「なんで……泣くの?」
あたしはどうにか言葉を搾り出した。
「だって俺遥の耳を……」
そこまで言って、ボロボロと涙をこぼす純也。
あたしは左右に首を振った。
あたしは純也のことを殺そうとしてしまった。
それでも純也はあたしを救ってくれたんだ。
それだけで十分だった。
「あたしこそごめんね」
あたしは純也の首に手を当てた。
そこにはあたしの指のあとがクッキリと残っている。
自分でも想像できないくらいの力がこめられていたことがわかって、背筋が寒くなった。
もし、純也が感染したら、あたしはどうしたらいいんだろう?
そう考えて、ポケットの中の包丁をそっと握り締めたのだった。
☆☆☆
しばらく公園で休んでいたが、そうのんびりもしていられない。
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