悲鳴

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香が、閉じられているトイレのドアを開けた。 その瞬間、床に誰かが倒れているのが見えた。 その奥に女子が1人立っている。 「え?」 雪が間の抜けた声を発する。 倒れている女子生徒は首から血を流していて、立っている生徒の手にはカッターナイフが握られている。 その情景をようやく理解したあたしは大きな悲鳴を上げていた。 「り、理恵!?」 香が青ざめて声を上げる。 それはカッターナイフを持っている女子生徒の名前だった。 同じクラスで、昨日都市伝説について話をしていた1人だ。 名前を呼ばれた理恵がゆっくりと顔を上げる。 それはまるで、壊れたおもちゃみたいな動きで、ゴキゴキと骨が鳴る音がトイレに響いた。 あたしはゴクリと唾を飲み込んで理恵を見つめた。 それはよく知っている友人のはずなのに、全く知らない別人のように感じられた。 そして、理恵が顔を上げる。 髪の毛は振り乱されてボサボサになり、大きく見開かれた目は灰色に濁っている。 「理恵がその子を襲ってたの!」 座り込んだままの幸子が悲鳴に近い声でようやく声を発した。 え……?
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