悲鳴

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理解するより先に、理恵がカッターナイフを握りなおすのが見えた。 そして高々と振り上げる。 それを見た香がトイレのドアを乱暴にしめ、雪の手を掴んで教室へと逃げ込んだ。 あたしは咄嗟に座り込んでいる幸子の腕を掴み、力づくで立ち上がらせていた。 そばにいた男子生徒が手伝ってくれて、幸子を引きずって教室へと入る。 その直後だった。 バンッ! と大きな音が響いてトイレのドアが開け放たれた。 廊下に響く悲鳴。 振り返ると理恵が不特定多数の生徒へ向けてカッターナイフをつきたてようとしているのが見えた。 なに、あれ……。 愕然としてしまい、時間が止まったようにさえ感じられた。 「なにしてんだ!!」 男性教師3人が廊下を走ってやってきて、理恵の体を取り押さえる。 血のついたカッターナイフが廊下を滑っていくのが見えた。 「みんな、教室へ戻りなさい!」 遅れてきた女性教師が教室へ入るように促す。 その様子をあたしはただ呆然と見つめていることしかできなかったのだった。 ☆☆☆
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