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見ると、幸子が椅子を倒して立ち上がったところだった。
「どうしたの幸子? 気分悪い?」
隣にいた子が心配そうに声をかける。
しかし、幸子は返事をしなかった。
無言でうつむいて立っている。
ただそれだけなのにどす黒い雰囲気を感じて、あたしはそっと席を立った。
なんだか嫌な予感がする。
背中にジワリと汗がにじむのを感じる。
「幸子?」
もう1度声をかけられたとき、幸子が顔を上げた。
ゆっくりとあげられたその顔は……理恵と同じ、灰色の目をしていた。
え?
愕然としている暇もなかった。
幸子の右手にはカッターナイフが握り締められていたのだ。
その手は高々をあげられ、そして隣の生徒へ向けて振り下ろされた。
ガッと音がして女子生徒が目を見開いたまま倒れこむ。
少し間が空いて悲鳴が上がった。
倒れた生徒の肩から血が流れだし、制服をぬらしていく。
「幸子なにしてるの!?」
誰かが叫んだ。
幸子は灰色の目をそちらへ向ける。
あれは本当に幸子なの?
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